戻る 目次 

大友の姫巫女

南海死闘編

閑話 知瑠乃育成計画

 久しぶりの出だしですが、珠です。
  杉乃井で日向出陣に向けて色々と準備中なのですが、何でか目の前にででんと麟姉さんと政千代が。
  何か、悪い事した覚えはないのだけど……

「姫様。
  失礼ですがその着物は何でしょうか?」

 ぽん。
  ちょっとばっかし、インスピレーションにくるものがあったのでそっこーで採用したのだけど駄目かな?

「まさかと思うのですが、それで日向遠征に……」
「というか、ほとんど見えているのですが……」

 こう何か爆発するのを抑えているような感じで、二人が淡々と呟く。
  何処が?
  隠れているじゃない。

「姫様。
  失礼ですが、墨を塗っても隠れないものがあるのですが。
  色々と」

 戦国期の裁縫技術であの紐みたいな紋様を用意するのはさすがに無理だった。
  で、その時私に電流が走る。

 そうだ!ボディペイントという手があった!!

 人間とは偉大なもので、ちゃんと足りなければ対処の為にあがくものである。
  で、墨でべたべたと。
  汗やなにやらで墨が溶けるのが色っぽいと遊女達には大好評だったりする。
  そんなわけで、この服には問題が無い(力説)。
  何しろ某ニコニコする動画で有名な紳士服ブランドからネタは頂いてきているから、男どもはメロメロである。
  このブランドデザイナーが外国の元軍人というのだから、世界もまだまだ捨てたものじゃない。
  なお、そんなブランドを着たモデルの女性も、全適正Sという「慣れです」という言葉の似合う小悪魔な女性だったりする。
  そんな女性になりたいものである。

「ふっふっふ。
  だいじょーぶっ!!
  この絹袖を両腕に装着すれば、手で隠せ……」

「「おやめください!!!」」

 何故!?

 結局、二人の激怒説教+泣き落とし懇願の果てに、ストリップ時のみという事で妥協が成立したのだった。
  せっかく取った痴女スキルがもったいないなぁ。
  で、しぶしぶ普通の着物に着替えて政務をと思ったら今度は大谷紀之介が。

「姫様。
  知瑠乃殿の事でお話が」

「何よ?
  悪さしたなら説教していいと許しは与えたつもりだけど?」

 衣装の件で不機嫌な私は、若干トーンが八つ当たり気味だったりする。反省。
  もっとも、そんなこっちの機微を知らぬふりをしつつ大谷紀之介が用件を口にする。

「悪さではないのです。
  ただ、武道にかまけて少し勉学の方がおろそかに」

 ああ、それは仕方ない。名前が名前だし。
  一応、あの娘を最終的には氷帝様に育てようとは思っているのだが、メガ⑨は無理だろうと思っていたし。
  さしあたって、現状はチル姉路線だろうか、ロサ・ブリュまで行くと嬉しいのだが。

「姫様は、小野鎮幸殿に勉学を促された事を聞き及び、それがしが懇々と説いても聞く耳が無い様子で。
  恥ずかしながら、姫様のお力を借りたく」

 あー、「ほっとけ」と言えなくなってしまった。
  腕を組んでため息をつく。

「あの手の手合いは、一番得意なものを打ち砕けばちっとは聞く耳を持つんだけど、男子が喧嘩をふっかけるのもあれだしねぇ」

 彼女がいい感じでプチ大久保彦左衛門路線を突っ走っているのも、いくつかの奇跡と思惑が交じり合っているからである。
  まず、当然の事だが知瑠乃は女である。
  で、男から喧嘩をふっかける事ができない。
  やって、勝つのは当たり前だし、そもそも知瑠乃がちょっかいを出すのは、非が相手側に合ってかつ自分ではない第三者を助ける為に出張ってきているのだ。
  この時点で男に大義名分が無い以上、勝ち負けどうこう以前の問題である。
  しかも、知瑠乃の背後についてる輩の政治力がまたえぐい。私の事なのだが。
  あれ?私がいつの間にか黒幕になってね?
  元々、別府での長寿丸との喧嘩友達だったのだが、長寿丸に家臣団からの近習がつくようになると、子供社会における彼らの横暴に知瑠乃が祭り上げられてしまったのだ。
  しかも、彼らの年代で初陣を果たして敵の大将をスナイプするという大功をあげ、父上の顔見せを済ませてお菓子という褒美をもらうという実績もちである。
  なお、養母上も元々内気気味の長寿丸をぐいぐい引っ張ってゆく知瑠乃が気に入っているらしく、保護者の白貴姉さんも父上の愛人の立場。
  うん。既に閨閥の時点でこいつ側近連中に口答えできる輩はいないだろうな。

「悔しかったら、あんたらも戦の一つで功績を立ててみなさいよ!」

 この一言で、何人の長寿丸の近習達が悔し涙を飲んだ事か。
  彼らの初陣が今回の日向遠征であるあたり、いかに知瑠乃の一言に言い返せなかったか判るだろう。 
  そんな訳で、力でねじ伏せるのはパス。

「んじゃ、あれの得意としているもので凹ませるのがいいんだけど……弓よねぇ……」

 私の実に困った顔に大谷紀之介も困った顔しか浮かべない。

「それがしを含めて、同年代で弓で知瑠乃殿の弓に適う者がおらず……」

 チルノに弩って補正発動条件らしいから、まあ面白いように的に当たる。
  ……私、彼女に何も神力与えてないんだけどなぁ……

「姫様は一時期剣の道にはまっていらした時がある様子で。
  道は違えども是非とも諌めて頂きたく」

「あー。それパス」

「ぱす?」

 大谷紀之介のきょとんとした顔なんて気にせずに私は手をぶんぶんと横に振る。
  きっと顔も赤くなっているに違いない。

「異国の言葉よ。
  気にしないで。
  私の剣の道と知瑠乃の弓は一緒にしたら知瑠乃に失礼よ」

 私の場合は純粋に神力を使ってチートしていただけなのだ。
  おまけに、丸目長恵に見事にずたぼろにされるというおまけつき。
  結局、与えられた力は自ら手に入れた力に勝てないと切実に思い知って、剣の技を封印したのだった。
  そんなこともあって、神力スキルについては極力直接的攻撃能力とかよりも、補助系を意図して取るようにしている。
  実際、使い勝手は補助系の方が使いやすいしね。
  話がそれた。

「とりあえず、大会でも開きますか。
  どうせ日向遠征組も武功を立てようと張り切っているんだから、いい景気付けになるわ。
  で、知瑠乃が負ければ反省するでしょうし、勝っちゃったらまた何か考えるわよ」

 まぁ、勝っちゃうんだろうなぁとうっすらと思いながら、私はとりあえずその場しのぎの妥協案をだしたのだった。
  案の定、それは的中する。
  『輝け!第一回杉乃井弓術大会』(何が輝けなのかよく分からないが、なんとなく語呂がいいから私が入れた)は晴天の中、杉乃井御殿で開かれたのだが……
  見事に真っ青になっている男連中と、一人ガッツポーズをしている紅一点、まぁ知瑠乃の事なのだが。

「あたいったらさいきょーねっ!」

 うん。こうなるとは思っていたが、本当にやりやがった。
  お祭り好きな私の企画だから、観客も居る訳で。

「お前等、女子に負けてどうする!!」

 日向遠征軍に加わる予定でこっちにやってきた小野和泉が激怒しながら若集に説教しているし。
  人は年を取ると変わるもんだ。あの小野和泉が説教する側に回るとはねぇ。

「大義である。
  これからもその弓で珠の助けとなってくれ」

 ああ、父上も養母上もめっちゃいい笑顔で知瑠乃を褒めてるし。
  どうせ、母上と白貴姉さん含めた御乱交の後ついでに顔を出したのだろうけど、こういう時に顔を出すあたり腐っても大名とその正室だよなぁと素直に感心したり。
  あ、参加していた大谷紀之介も凹んでって……あんたが凹んでどうするよ。

「ん?
  娘よ。何やってるの?」

 噂をすれば、その母上が私に声をかける。
  湯上りらしく、体からほのかに漂う湯気が艶かしい。

「弓の大会をしていたのです。
  あそこで跳ねている知瑠乃が優勝したのですが」

 何かエロエロではない空気で母上が的を見ているのですが。

「懐かしいわね。
  ちょっと、これ借りるわよ」

 若集の一人から弓を借りた母上が矢をつかえ構える。
  その姿が絵になっていて、私も回りも声をかけるのを忘れ、母上がはなった矢が的を射抜くのをただ見つめる事しかできなかった。
  なお、母上が矢をはなった場所は、知瑠乃が弩を放った場所より遠い。
  知瑠乃を含め、一同皆ぽかーん。
  何しろ、誰もが予想すらしなかった母上が、それまでさいきょーぶりを見せていた知瑠乃の鼻っ面を叩き折ったのだから、誰もその想定外の事態についていけない。
  で、そんな状況を生み出した母上というとすたすたと知瑠乃の所にやってきて、あたまをぽんぽんと撫でながらにっこりと。

「この年であの的に当てるのは凄いけど、この杉乃井ではまだ二番目よ」

 あんた何処の特撮ヒーローですか。
  で、去ろうとする母上に小野和泉が声をかける。

「御前様、恐るべき弓の腕で」

 その小野和泉に弓を渡して当たり前の様に一言。
 
「那須与一には負けるわ」

 あ!!!
  そーいや、この母上元々は源平合戦時の宇佐焼失を防ぐ為に実体化したんだった。
  という事は、えろえろあへあへしているくせに、何しろ古の鎌倉武士とやり合う為に騎馬適正と弓適正高いのか?
  あの時代の武士連中騎射レベル高いだろうからなぁ。

 
  で、この話のオチなのだが……

「姫様。
  知瑠乃殿の事なのですが、あの後『御前様のようになるんだ!』と白貴太夫の手ほどきを受けて、やはり勉学には……」

 大谷紀之介の疲れきった報告に、そっちに行きやがったあの⑨はと私も頭を抱えたのだった。

 


戻る 目次