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大友の姫巫女

南海死闘編

第三話 老将は死なず

 吉田郡山城は安芸国の山の中にある。
  城外に広がる屋敷群などはその毛利の繁栄を象徴してはいたが、西国の雄たる大毛利家の中枢とは思えないほど質素な佇まいをしていた。
  それも大友との講和の後、安芸国広島に新たな城を建設しつつあり、既に商業施設などは広島に移りつつあったからである。
  新たなる本拠となる広島城は大友の技術支援もあり、完成すれば太田川の三角州に五層の大天守そびえる西国の首都と呼ばれるであろう大城郭が建築中である。
  若き当主である毛利輝元は広島にて小早川隆景や吉川元春の補佐の下で政務の一部を行いだしているが、毛利躍進を一代にて成し遂げた毛利元就はこの吉田郡山より動こうとはしなかった。

「この城が全てだった男でしかないよ。わしは。
  天下など、わしの手には大きすぎる」

 かつて息子達や義娘に語った言葉どおり、彼はこの城で終わるつもりらしい。
  だから、九州の地より南蛮船にてやってきた珠姫御一行は、わざわざ吉田郡山の地まで足を運ぶ事になった。
  病で床についていた毛利元就は三人の孫娘の前では、ただ孫の到来を喜ぶ老人でしかなかった。


  月夜美しい穏やかな夜、開け放たれた部屋に月明かりが届き、半身を起こしていた毛利元就はその明かりに照らされた庭を眺めていた。

「起きていたか」

 毛利元就の寝室として使われている部屋に彼以外の声が響く。

「来ると思っていた。
  だからこうして待っていた。
  人払いは一応しているつもりだ」

 声の方に顔を向ける事無く、毛利元就は声の主である大友義鎮に声をかける。
  静かな夜に少し荒々しく床を鳴らしながら、大友義鎮は毛利元就の隣に座った。

「娘が気に入っている、南蛮渡来の酒だ。
  葡萄という果物で作られた酒だそうだ」

 手に持った箱を開けてワインを取り出す。
  ワインボトルの隣に入っていたのは、ワイングラスではなく景徳鎮製の青花の茶碗だったりする。
  飲みなれない人間がワイングラスを持ちそこねて落すのを心配した珠姫の心遣いなのだが、それは当の二人に分かる事無く、普通の酒のように大友義鎮はそれにワインを注ぎ毛利元就に渡す。
  なお、この染付磁器に金の匂いを感じた珠姫は、大陸や半島から職人を呼んで肥前国唐津にて大規模な窯場を整備したはいいが、なかなかいいものが作れずに苦労しているのを二人は知っていた。

「毒は入っていないだろうよ。
  あれは、『はやくくたばれ』と毒つく事はあれど、手は思ったよりまともゆえな。
  闇討ちあたりを覚えて欲しいとは思うが」

「そうだな。
  松永久秀や宇喜多直家、織田信長あたりを相手にするには少しあの娘は優しすぎる。
  だから、手を貸したのだが」

 そして二人同時にその茶碗をあおる。
  もちろん、毛利の家臣の毒見済みではあるが、互い同時に飲むあたり戦国の信頼感がいかほどのものか現していた。
  茶碗に入ったワインを揺らして毛利元就は楽しそうに笑う。
  その笑いが気になったのか、大友義鎮はワインを飲む手を止めて口を開いた。

「やはり、織田信長があれの敵になるか」

「群上八幡の合戦の詳細は聞いたか?
  あやつ、わしが考え、我が義娘が差配した手を更にでかくやりおった」

 

 畿内の合戦は京を押さえ足利義昭を擁する織田と、足利義輝を旗印にする上杉家の同盟国である浅井・朝倉家の合戦に集約されていた。
  浅井に奪還された横山城を取り返すために、織田は総力をあげて兵を出し、朝倉は浅井の後詰に動くという戦を織田信長は読みきっていた。

「多方向から攻撃を受けた信長は、それを各個撃破せざるを得ない状況に追い込まれているわ。
  だから、それをさせない為に多方向『同時』攻撃に切り替える必要があるの。
  そして、大将である信長の動きを封じ込める。
  厳島よ」

 そうほざいた珠姫へのあてつけのごとく、横山城へは明智光秀と柴田勝家率いる近江衆・美濃衆一万が、琵琶湖西岸を北上し若狭および敦賀に向かう軍勢には森可成と羽柴秀吉と松永久秀率いる一万二千が進撃していた。
  これに対し朝倉家の防衛の総指揮を取る朝倉景紀(朝倉義景に丸投げされたともいう)は、横山城だけでなく若狭の防衛に手を回す必要があり、更に都合が悪い事に能登畠山氏の内紛から一向一揆が、能登・越中・加賀で再蜂起してしまい、その対処に追われていたのだった。
  それを朝倉景紀によって失脚されられ、油坂峠を越えて美濃を突く事で復権しつつあった朝倉景鏡が見逃すはすが無く、再度斎藤龍興と共に勝手に油坂峠より一万五千の兵を持って美濃に侵攻した。

 それが織田信長の罠である事も知らず。

 美濃国群上八幡まで出向いた朝倉軍は、待ち構えていた織田信長の旗本及び丹羽長秀・佐久間信盛・滝川一益率いる尾張・伊勢衆二万を見て待ち伏せされていた事を悟り撤退しようとするが、織田信長自らの急襲によって壊走。
  朝倉景鏡と斎藤龍興は討死し、油坂峠から越前に戻るまでに朝倉軍は三千近い兵を織田軍に討ち取られるという大敗北を喫したのである。
  そのまま兵を近江に転じて横山城を攻める織田軍を止める力を浅井・朝倉家は持っていなかった。
  更に、琵琶湖西岸に兵を勧めていた織田軍にいた松永久秀の手引きで、若狭の国人衆が織田側に寝返るに及んで朝倉家は横山城への後詰を断念し、横山城は再度織田家のものになったのである。
  その詳報を聞いた珠姫は、

「こっちの手をちゃんと理解して、三倍返しを食らわしやがった。
  これだからチートは……」

 と呻きながら頭を抱えたらしいが、彼女の異国語は家中の誰も分からなかったのでそのまま闇に葬られている。
  とはいえ、織田信長が群上八幡の勝利の余勢を持って越前に侵攻しなかったのは、飢饉による兵糧不足のせいだった。
  銭の力を知っていた織田信長は、それでよしとして市場の力を深く理解していなかった。
  何故彼が飢饉に苦しむ畿内を抱えながら大兵を動かせたのか、それは畿内の銭をかき集めて米を買い占めたからに他ならない。
  この米の買占めが飢饉のさならる拡大を招き、しっかりと信長に跳ね返ってくるのだから因果応報とは良くできているものである。
  その信長の銭を持ってしても越前侵攻に足りるだけの米を集め切れなかった、いや、急上昇し続ける米価に信長の銭が追いつかなかったと言った方が正しいだろう。
  信長自身は織田領内の米の価格統制で乗り切ろうとしたが、大商人連中である堺衆は信長の影響下に置かれておらず、物が無くなるのではなく無くなる恐怖が価格を作るという事を理解していなかった。
  彼が堺に対して価格統制令を出しても、

「物が無いのに、価格を抑えろとは無理ですな。
  そもそも、どこぞの誰かが米を買い占めて戦など起こさねば……」

 けんもほろろである。
  大友毛利の西国連合による流通圏ができた事によって、証文経済の進化として手形取引が始まり、物資は全て門司に集められ、堺は消費地の窓口として機能しだしていたのだった。
  既に米そのものが無い堺に対して、物資集積地である門司を抱え込んでいた博多に米価決定権が移っていた事が悲劇に拍車をかけた。
  この米の狂乱相場は結果として甲斐・信濃に地獄を現出させ、奥州・北陸では民の飢餓などお構いなしに港から米が門司に送られるという惨劇があちこちで見られ、歴史に、

『飢えて死す者、その数わからず』

と伝えられる伝説の大飢饉となるのだが、この米相場で米そのものを持っている門司を抱える大友家と毛利家は笑いが止まらないほどの儲けを出しており、広島城の建築資金などはそこから出たあぶく銭の有効活用だったりする。
  なお、大友家におけるあぶく銭の使い道が唐芋の普及であり、大陸からまで米をかき集めた米価相場の操縦と、流民を台湾に捨てるがごとく送りつけた殖民政策だった。

 

「とはいえ、戦をするのは貴様の孫だろう。
  勝てるのか?」

「負けぬ事で精一杯だろうな。
  何より、輝元も義娘も天下など望んではおらぬ」

 ワインでうっすらと内側が紅色に染まった茶碗を置いて、二人の話は進む。
  酒の肴には少し物騒な会話なのだが、楽しいらしく二人とも顔に笑みが浮かんでいた。

「あれが考え出した鎮台を近く作るつもりだ。
  ひとまず、山口・三原・月山富田に置こうと思っている」

 毛利元就がぽつりと漏らした言葉に、大友義鎮が口元に手を当てて返す。

「鎮台を作るか。
  だが、その数では追いつかぬぞ」

 そもそも珠が考案した鎮台制度というのは、反乱に対する攻勢防御を名目に国衆の動員に任せていた兵の管理を大名が把握し、擬似的な常備兵化と訓練による精鋭化に装備の統一、鎮台所属の一体感を国衆ではなく大名家そのものへの忠誠に切り替えるという彼女の兵制の肝であった。
  だからこそ、大名統治が進んでいる本国豊後では旗本鎮台を入れて、日田・日出・臼杵・大野と五つもの鎮台が設置されているのだ。
  だが、毛利元就が出した地名に一つとして本国安芸の名前が出ていない事で、大友義鎮はいやでも悟らざるを得ない。
  西国随一の大大名毛利家は、外様系の国衆は制圧し粛清できたとしても、内部の譜代・一門衆の統制がまだ行えないという事を。
  それは、一代で成り上がったが為に一門・譜代・外様の関係が序列化しておらず、緩やかな連合政権として成立している毛利家の宿命でもあった。
  大友家の場合、土着の外様である大神系氏族を長い年月をかけて粛清し、義鎮自身が二階崩れや小原鑑元の乱で一門・譜代の粛清を、そして珠が占領地である豊前国人衆を掌握し、筑前国人衆を粛清する事で大名支配の完成を一応達成している。
  それですら、後回しとなった筑後国人衆に対する統制は後手後手に回り、柳川鎮台設置に対して柳川城主である蒲池鑑盛に大友義鎮自ら文を書いて理解を求めているし、阿蘇家や相良家という二大勢力が幅を利かせている肥後等は彼らに下駄を預ける始末。
  大友家ですらこれである。
  ましてや、毛利家の場合、そもそも吉川元春と小早川隆景の序列すらはっきりしておらず、一門や譜代衆の序列は何をいわんやである。

「わしができるのはここまでだろうな。
  月山富田に吉川元春、三原に小早川隆景、山口には内藤隆春をと考えている」

 大内家との縁も深く長門守護代でもある内藤隆春は、家中から讒言を受けてその詮議が続いている最中だったりする。
  広島では、三村家の粛清による毛利直轄領組み込みが、道理を得ない形の粛清(何しろ元同盟国で不義理など無い形での粛清併合)だった事もあり、

「次は誰か?」

 の疑心暗鬼に捕らわれつつあったのである。
  その疑惑の渦中にいる内藤隆春に山口鎮台を任せるという方針は、動揺する家中を収める効果があるだろう。 
  もちろん、内藤隆春をそのまま信じるわけではない。
  山口の先にある博多に四郎こと立花元鎮という一門が控えているからこそであり、山口で反乱が起きたとしても潰せると判断しているからに他ならない。
  そして、その反乱に大友が介入しない事が分かっているからこその手だ。

「今の時期に長門侵攻?
  馬鹿いわないでよ!
  大友という大敵で毛利が一枚岩になるじゃない!!」

 某大友家加判衆の意見だが、この冷徹かつ冷酷な意見を毛利元就も読みきっていたからこその策だった。

「吉川と小早川か。
  優秀すぎる一門は揉めるぞ」

 実に白々しく大友義鎮は心配してみせる。
  事実、この時期の毛利家中は宗家輝元が若年なのもあって、権力が二人の叔父になる吉川元春と小早川隆景の二人に集約しつつあり、しかも担当が吉川が山陰、小早川が瀬戸内と分かれた為に、双方の国人衆の利害対立に上が巻き込まれるという情況もしばしば起こっていたのだった。

「貴様が一門の心配をするか」

 それだけ言って毛利元就が哂う。
  毛利元就の策でもあったが、陶晴賢亡き後に糸の切れた傀儡と化した大内義長を見殺しにしたのは、目の前にいる大友義鎮自身なのだから。
  なお、追い詰められた大内義長を返還しても良いという毛利側の申し出に対して、大内の一品である大内瓢箪という茶器を要求したという逸話まで残す始末。
  だが、大内義長が死ぬ事で大友宗家は義鎮ただ一人しか残らず(この時点で大友親貞の存在は義鎮は知らなかった)、否応でも豊後が一本化したのもまた事実であった。

「あの時、もらった大内瓢箪に茶を入れるたびに、晴英(大内義長)の事を思い出すのだ。

 誘ふとて 何か恨みん 時きては 嵐のほかに 花もこそ散れ

 晴英の辞世の句は忘れた事がない。
  そして、その句を思い出す度に、無念そうな顔をこちらに向けて何も言わぬやつが現れる。
  わしは経のように呟く事しかできなんだ。
『もう少し待ってくれ。
  貴様より惨たらしく死んで地獄に落ちる』
とな」

 茶碗に残っていたワインを飲み干して、改めて二人の器に大友義鎮はワインを注ぐ。

「何を持って親を超えるか。
  親の愛など分からぬわしにとって、それだけの為にしか生きてこなかった。
  九州探題となり、父上を超えた後はどうなってもいいと思っていた」

 茶碗を持ったまま大友義鎮は月夜に照らされる庭を眺めた。
  黒と白によって作られる世界は静かで、時が止まってるように見える。
  淡々と語る大友義鎮の言葉に毛利元就は口を挟まなかった。

「そんな時、宇佐に預けていたあれがいい感じに育ってきた。
  会ってすぐに分かったよ。
  わしが何をしたか知っていると」

 目を閉じて楽しそうに笑う大友義鎮の瞼には、まだ幼子なのに才を出してかつ『こいつは危険だ』と警戒心ばりばりで身構えていた珠の姿が映る。
  事実、和解するまでの父娘の会話の殆どに愛などありもせず、毛利元就の蠢動もあるのだが間違いなく珠姫は大友義鎮を殺す覚悟を決めつつあり、大友義鎮もそれを受け入れようとしていた。

「嬉しかった。
  因果というのは巡るものだとわしははじめて神仏に感謝したよ。
  これならば、わしを殺してくれる。
  親を殺して家を奪ったわしが娘に殺されるだろうとな」

 吐き出した大友義鎮の顔に、闇も後ろめたさも無い。
  その顔を毛利元就はしばらく無言のうちに眺めた後、興が冷めたように息を吐き出した。

「変わったな。
  いや、変えたというべきか。
  あれのせいで」

 あれとは、毛利元就にとっての義娘であり、大友義鎮にとっての愛娘である珠姫に他ならない。
  大友義鎮は二杯目のワインを飲み干すが、三杯目を注ぐ事無くその茶碗を置いた。
  茶碗を置いた音が月明かりの中で少し大きな磁器特有の澄んだ音色を奏でる。
  その音が今の大友義鎮を現していた。

「晴英の事も最近は見なくなった。
  だが、地獄であれに逢った時に誇って言おうと思う。
  『わしの娘は凄いだろう』とな」

 そう誇る大友義鎮を毛利元就は羨ましいと素直に思った。
  そして、先に逝った毛利隆元がいれば言い返す事ができるのにと、訳も無く溢れた思いを無表情に抑えて、二杯目のワインを飲み込んだ。

「大名とは孤独なものだ。
  こんな話をする事もできぬ。
  だが、わしも年だ。
  愚痴の一つも漏らしたい時はある」

「漏らせばいいではないか。
  全てを子や孫に押し付けて。
  そして誇ればいい。
  親にできぬ事を押し付けるのもまた子の勤めだ」

 大友義鎮が豪快に笑い、呆れた毛利元就だがつられて二人して笑い出す。

「一つ頼みがある」
「用件にもよるな」
 
  真顔に戻った毛利元就の言葉に、大友義鎮は笑顔のまま答える。
  そんな大友義鎮の言葉など聞かなかったかのように、すらすらと毛利元就は用件を口に出した。

「輝元に恨まれてやってはくれぬだろうか?
  育てはしたし、元春や隆景がついてはいるが、だからこそあれには狂気が分からぬ。
  この戦国の世において、道理のみで進む訳ではない。
  理不尽かつ不条理なものを教える事はできなんだ」

「それをわしに押し付けるか」

「当然の事だ。
  何しろ、おぬしにとっても輝元は息子になるのだからな」

 奈多夫人との間にできた二番目の娘である梢姫が近く毛利輝元の元へ嫁ぐ事になっている。
  珠や四郎などは孫の顔見せの他に、この縁組の打ち合わせも兼ねていたりするのだが、大友義鎮は純粋にただついてきただけで口を出してはいない。
 
「ふん。
  娘になら殺されても構わぬが、義息にはわしを殺せるだけのものはあるのか?」

「ないな」

 即答して見せた毛利元就に大友義鎮が呆れる。
  その顔を見て、毛利元就は心底楽しそうに笑った。

「おぬしにその顔をさせたのだ。
  わしの孫も中々凄かろう。
  だから教えてやってくれ。
  おぬしを殺すには家中まとまらねばならぬと。
  元春や隆景や元鎮、一門譜代全てと手を取って当たらねばならぬとな」

「……まぁ、良かろう。
  餓鬼の殺意など娘でなれておるわ。
  だが、そこに娘を入れなくていいのか?」

 珠の名前を外した事に大友義鎮はその真意を尋ねる。
  毛利元就の答えは大友義鎮の想定していた答えと同じだった。

「言わなくても分かる。
  何しろ、わしの義娘だからな」

 

 毛利元就の部屋を後にした大友義鎮は、そのまま隣の部屋に顔を出す。
  そこには、毛利輝元・吉川元春・小早川隆景・珠姫・四郎と一同が雁首を揃えて二人の話を聞いていたのである。
 
「人払いは一応しているつもりだ」

 という毛利元就の言葉を思い出して大友義鎮は笑みを浮かべるが、その笑みが怖いらしく毛利輝元が腰を浮かそうとして吉川元春と小早川隆景に視線でたしなめられる。

「聞いたとおりだ。
  わしの首は餓鬼にくれるほど安くは無い。
  全員でかかってこい」

「「「「「はっ」」」」」

 その一言に、控えていた全員が頭を下げたのだった。


  毛利元就は、それからもうしばらく生きた後に吉田郡山城で子や孫に囲まれ、畳の上で静かにその生を終えた。


  友を得て 猶ぞうれしき 桜花 昨日にかはる けふの色香は


  大内・尼子を過去の亡霊に押しやり、大友と死闘の果てに和解し西国にその影響力をくまなく広げた戦国時代随一の英傑は、静かに去った。
  そして、毛利元就の願いどおり、毛利と大友は戦国の終わりまで争う事は無かった。


 


 

 

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