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大友の姫巫女

第五十八話 豊西戦争 前夜から一日目

 勝負とは、どれだけ己の失敗を少なくするかで勝敗が決まる。
  特に、人の生死はおろか国家の盛衰まで左右する戦争などは、それが特に顕著に出る。
  この豊西戦争においても、それは当然のように戦争の結果に繋がったのである。
  西――スペイン(イスパニア)――側は、過去の成功体験から侵攻を始めた事自体が最大の失敗だった。
  新大陸征服、アステカを滅ぼした時は兵五百人、インカを滅ぼした時も兵百八十人というものだった。
  そう、フィリピン征服に用意した兵五百人というのは、決して相手を舐めていたものではなく、彼らが用意できる限界人数だったのである。
  とはいえ、この征服事業は順調とはほど遠く、最初の征服地であるフィリピンですらゼブ島を制圧したのみでメキシコに増援を求めたというのにも係らず、その侵攻の矛先を日本に向けてしまったのは致命的失敗だった。
  そして、豊――豊後大友家――側も失策を犯していた。
  南蛮としか区別していないポルトガルとイスパニアの違いが分からず、南蛮船交易で共存体制ができつつあり、キリスト教布教にも寛容であった事もあって、自らの王城が直接攻撃を受けるとはまったく思っていなかったのである。
  結果として、大友家はこの戦争によって十数年、イスパニアは数十年の血の代償を払い続ける事になる。
  その結果として、東アジア交易で漁夫の利を得たポルトガルだったが、かの国もその繁栄を長く謳歌する事はなかったのである。

 20XX年 国営放送 「歴史 その瞬間  信仰の代償――カトリック布教とその結末――」より

 

「おねがい。
  もう一回言って。
  嘘って言ってよ!」

 私の叫び声に政千代の怪訝そうな顔が、先ほどと同じ言葉を言う。

「いえ。
  私はトーレス神父からこの通りに言えと。

『タマヒメサマガイタンニンテイサレタ。
  イタンシンモンダンガココニヤッテクル』

 これが何か?」

「あはっ……あははっ……
  私も色々人生経験したけど、今の言葉は人生において最悪から二番目の言葉に認定されたわ。
  あははははははは……」

「姫様っ!」
「姫!おちついて!」

 狂ったように笑う私に、四郎や麟姉さんが心配そうな顔で私を宥めるけど私の笑い声は止まらない。
  なお、人生一番に悪い言葉は常に未来の為に取ってあったりする。

「何があったって言うの?政千代」
「私にもさっぱり……」

 完全に気が触れたような私に白貴姉さんも、その言葉を伝えた政千代も目をぱちくりするばかり。
  ああ、この言葉の意味は私にしか分からない。
  だからこそ、哂う。
  私自身を。
  私が変えた世界を。
  私が歪めた歴史を。
 
  ぴたりと私は哂うのを止めた。
  そしてその顔に浮かぶ狂気にも似た笑顔に皆が言葉を失う。

「政千代。
  トーレス神父に連絡を取って、こっちに来てもらうようにしてちょうだい」
 
「は、はい。
  姫様」

 ぴくりと政千代の体が震えるが、今の私はそれに構う余裕がない。

「瑠璃御前。
  大神の安宅殿に文を。
  『日振島の南蛮船を全て大神に呼び寄せろ』。
  府内の父上にも。
  『南蛮から新たな国が来る可能性あり』。
  書き上げたら私が花押を押すから、両方とも早馬で届けて」

「御意」

 こういう時に大人である瑠璃姫は、臣下としての礼をしっかり取るからありがたい。
  いつの間にか八重姫と九重姫がいなくなっているから、文を書きに行ったな。
  自分がいやおうなく上に立つ者――下の者の生活や命を支えている――という義務を思い出させてくれる。

「白貴姉さん。
  遊女で姫巫女衆に属している者のお仕事を全面的に中止させて」

「了解。姫様」

「麟姉さん。
  兵糧を城に運んで。
  四郎。御社衆を動けるようにしておいて」

「わかりました。姫」
 
「姫様。
  戦準備に近いのですが、何か起こるのですか?」

 一同を代表してなのだろう。
  麟姉さんが質問をする。

「起こらないで欲しいけどね。
  万一の為かな。
  新しい南蛮人が来るかもしれないから。その為にね」

 途中で八重・九重の両姫が書き上げた手紙に花押を書いて渡す。

「あと、旗本鎮台の戸次鑑連にも文をお願い。
  『新しい南蛮人が来る。警戒されたし』
  あ、政千代。
  あんたの父上にも手紙を書くから。
  ついでに何かあるなら持って行ってあげるわよ」

 八重姫は手紙を持って既に去り、即座に書き出した九重姫を見ながら政千代は急に振られてうろたえる。

「いえ。
  別に家にも戻りますから特に何も……」

 政千代の言葉をもう私は聞いていなかった。
  九重姫が差し出した戸次鑑連あての文に花押を書いて、立ち上がり襖を開けて眼下に広がる別府湾を眺める。
  スペイン異端審問団。
  某国国営放送では愉快な連中と化していたが、史実では悪魔より怖い連中として恐れられていた。
  私が異端認定。
  その先に待つのは多分火あぶり。どこのジャンヌだ。マジで。

 そして、ふと自問する。
  何が間違っていたのか?
  過度な科学知識の持込はしていない。
  そんなに頭が良くも無かったし。
  神力だって、豊饒祈祷など伝統の域を出ていないはず。
  女が戦で派手に動いた事か?
  考えども答えが出てこない。
  ため息をついて考えるのをやめる。
  今考えても、答えが出ないからだ。

 日本はキリスト教に対しては、いずれ豊臣秀吉の禁教をもって挑む。
  そこまで生き延びればこっちの勝ちだ。   

(来るなら来なさい。
  ただではやられないわよ。異端審問団)

 

 だから、見誤っていた。
  トーレスの情報が何処から来たのかを。
  そして、その情報がもたらされる前に異端審問団が出ているという事実を。
  こうして、最善手ではない手を打ったまま私はその日を迎える。

 

「姫様っ!
  新たな南蛮船五隻が豊後の港に!!」

 その報告を麟姉さんから聞いたのは、私が露天風呂で朝風呂につかっていた時の事だった。
  そのまま、裸で府内の方角を眺めるが、次に響いてきたのは大音量の爆発音だった。

「姫様伏せてっ!!!」

 麟姉さんが私に抱きついて伏せさせる。
  鉄砲も大砲も私が使っているから、この轟音が大砲の連射である事を麟姉さんは見抜いていたのだった。

「砲撃ですっ!
  速く中にっ!」

 私は見た。
  もうもうと黒煙を吐く中に、ひときわ大きな帆船五隻が火を吹く様を。

「が、ガレオン船……
  なんであれがあんな所に……」

 その衝撃は私にしか分からない。
  キャラックより大きな船体に積んである大砲は四十門。
  それが火を吹いている。
  府内の町が燃えているのか、黒煙があがる。
  瓜生島の方を見ると、停泊していたポルトガル船やシャンクも炎に包まれ、別府湾は地獄絵図のようになっていた。
  その現実を受け入れられなくて、

「姫様!
  しっかりしてください!珠姫様っ!!」

 いつの間にか麟姉さんに引っ張られて、御殿の大広間で服を着せられていた。
  呆然としていたのだろう。
  この事態に麟姉さんは私を揺さぶっていたのだろう。
  心配そうな麟姉さんの顔がすぐ目の前にある。

「姫!ご無事で!!」

 服を着せられた事で一斉に皆が大広間に入ってくる。

「篭城準備はできています」
「門前町の皆もこの御殿に収容を!」
「姫巫女衆は動けるようにしてあるわよ」
「御社衆もいつでも動かせます」

 皆の視線にやっと私は我にかえる。

「あ、ごめんなさい。
  門前町の皆を御殿に収容して。
  御社衆と姫巫女衆はその誘導を。
  舞、いる?」

「ここに」
「別府奉行に連絡を取って。『必要なら、杉乃井で皆を受け入れる』って」
「はっ」

 すっと現れて消えたくノ一の舞にも私は命令を伝える。

「何事じゃ!騒々しい!!」

 客人のくせに主人みたいに振舞いますね。鶴姫よ。

「ごめん。
  ちょっと戦になりそうだから、今、あんたに係っている暇はないのよ」

「何じゃ……むがむが……」
「姫様おちついて。
  毛利ですか?」

 鶴姫の口を強引に押さえたまま鶴姫侍女の夏が私に尋ねる。
  対毛利戦なら、鶴姫の立場はもの凄く厄介な事になるからだ。

「違うわ。
  南蛮船が府内に攻撃をしているのよ。
  目的は、多分私。
  ポルトガルの船を焼いたという事は、多分イスパニアね。
  まとめて消して証拠隠滅でも図るつもりなのかしら」

「えっ?」

 皆の視線が、私に集中する。
  しまった。
  今の一言は失言だった。
 
「どういう事か聞かせてもらいますかな?姫様」

 今までの声とは違う、枯れても響く声を発したのは、隠居して老後の楽しみ学校を開いていた吉岡長増老。
  吉岡老と隣の田北鑑生老なんて、ここに学びに来ている小野和泉と共に戦姿でやってきているし。準備速いな。

「既に、篭城の準備ができているというのは解せませぬな。
  姫様はこれを予感していたのかな?」

 田北老が運び込まれていた兵糧を見たのだろう。若干の不信感を持って私に質問する。
  分からないでもない。
  勝手に兵を動かすのは謀反と思われても仕方ないからだ。

「違います。
  既に父上には文にてお伝えしております。
  本来なら、杞憂に終わって欲しかったのですが、ポルトガル商館のトーレス神父から警告があったのです」

 南蛮への不信だけは避けなければならない。
  私の言葉に老人二人が怪訝そうな顔をする。

「それはまことですか?」

「はい。
  私がトーレス神父から直にお聞きしました。
  姫様はそれを受けて、こうして備えていました。
  父上にも文を出しているので、府内が落ちるとは思えません」

 よく見ると青白い顔で政千代が強がる。
  考えてみれば、あの砲撃を受けている府内に政千代の父たる戸次鑑連がいるのだ。
  雷神と恐れられる彼でも、この砲撃下で攻撃を受けている府内を守れるのか不安なのだろう。
  自分の事をひとまず棚において、政千代の頭を撫でる。

「ぁ……姫様……」

「大丈夫。
  貴方の父上を信じなさい。
  彼がいるなら、府内は落ちないわ。ね」

 強がりと分かっても笑ってみせる。
 
「で、何で姫様が狙われているのです?」

 核心の質問に触れたのは吉岡老。
  ちっ。
  一番触れて欲しくない事を。
  口を開く前に、麟姉さんが吉岡老に説明してしまう。

「そのトーレス神父が、姫様に伝えたのです。
『タマヒメサマガイタンニンテイサレタ。
  イタンシンモンダンガココニヤッテクル』
  と。
  我らはその言葉が分からないのですが、姫様はその言葉を聞かれて狂ったように笑いながら篭城の指示を」

「と、言う事は全て姫様は分かっているのですな。
  お聞かせ願いたい」

 射抜くような視線で私を見据える吉岡老。
  元加判衆でも謀略を担当していたほどの男の視線に耐え切れずに、私はついに口を割る。

「仏教の宗派争いを思い出してくれればいいわ。
  南蛮の宗教にも同じのがあるの。
  で、私が南蛮の宗教の一派に仏敵認定されたって、トーレス神父が教えてくれたわ」

 私の言葉の重さで皆が完全に黙り込む。
  遠くから砲撃している爆音が響いてくるのが心に痛い。

「な、なぜじゃ!
  何で姫様がそんな事に巻き込まれたのじゃ!!」

 田北老が激昂する。
  けど、その激昂は皆同じなのだろう、手を震わせて怒りを堪えている。

「そこまでは分からないわ。
  けど、狙いが私なら遅かれ早かれここに奴らはやってくるわ。
  だから篭城の準備を指示したのよ」

 不意に四郎が口を挟む。

「でしたら、姫はここからお退きになられて、宇佐に下がるべきかと」

「何で、私……」

 私の抗議を手で制して四郎はそのまま続ける。

「船は数隻。
  乗せている兵は多くても千を越える事はございませぬ。
  あの大砲がやっかいですが、それさえ押さえれば潰す事ができます」

 何時の間にそこまで見ていたのか。四郎。
  私のあっけに取られた顔などお構いなしに、私に向けて必死の説得の言葉を続ける。

「勝てる戦です。
  だからこそ、姫の御身を危険に晒してはなりませぬ。
  更に、これを機に諸国が悪さをしてくるでしょう。
  我が父なら、この機を逃しませぬ。
  豊前・筑前に睨みが効く人間がいないと、この二カ国毛利に寝返りますぞ!」

 まさか、四郎が己の立場を無視して毛利による豊前・筑前侵攻を警告するとは思っていなかった。
  皆、あっけに取られる中、四郎は土下座までして私に訴える。

「お願いでございます!
  姫は宇佐にお下がりくださいませ!
  姫が健在なら、豊前も筑豊も寝返る事はございませぬ。
  佐田殿、城井殿、高橋殿、田原殿も姫ならば忠義を尽くすでしょう。
  ですからっ!」

 四郎必死の懇願に、私の答えを待っている皆の視線に気づく。
  視線を察するに、皆同じ答えらしい。
  ああ、もうこの馬鹿野郎共。
  大好きだ。

「……五日持ちこたえて。
  杉乃井がそれだけ持ちこたえたならば、宇佐で必要な手配をして、中津鎮台の兵を連れて戻るから」
 
  その声に、皆の顔に笑顔が広がるのが分かる。

「麟姉さん、この城の事お願いします」

 何故か涙を浮かべて、麟姉さんが返事をする。

「はい。
  きっとお迎えにあがりますわ」

「白貴姉さんと瑠璃御前も、麟姉さんを支えてください。
  あと、恋を身代わりにするわ。
  私が杉乃井にいる事を広めて、南蛮船の攻撃を府内から別府に引き付けます」

 それは代わりに、この杉乃井が攻撃に晒される事を意味する訳で。
  自ら危険に晒されるのに係らず、飄々としている白貴姉さんと、力強く微笑む瑠璃姫が私の心に暖かさをもたらしてくれる。

「安心しな。姫。
  恋もこの為にいるんだから、由良共に支えて見せるさ。
  政千代を連れていきな。
  宇佐でも手足はいるだろう」

「かしこまりました。
  八重・九重をお連れください。
  姫の手足となるよう仕込んであります」

「「えっ!?」」

 ほぼ同時の二人の声に、名指しされた政千代と八重姫が声をあげる。
  その不意打ちの二人の声と無表情に頷く九重姫を見て、私も笑ってしまう。
  そして気づいた。
  さり気なく、死闘になる篭城戦から子供の三人を外した事を。
  きっと身代わりが無ければ、恋も連れて行きたかったのだろうと。

「吉岡老と田北老もよろしければって、その気満々ですね。
  田北老は小野和泉以下、ここに学びに来ている郎党をお任せします。
  吉岡老はその見識で麟姉さんの補佐をお願いします」

「安心してくだされ。
  この老骨、隠居するには若すぎるゆえ、若人の邪魔にならぬ程度に働きまするぞ!」

 田北老なんて、この面子で一番戦意が高く見えるのはどういう事だろう?
  小野和泉も顔が高潮しているし、この二人がいれば篭城も苦労はしないだろう。

「分かり申した。
  邪魔にならぬ程度に、お役に立つ次第」

 遊郭という性格から若者が多い杉乃井で、吉岡老の見識が暴走しがちな若者達を自制させるだろう。
  
  そして、また平伏したままの四郎を見つめる。
  その姿を見て悟る。
  彼は、ここに残るつもりなのだと。

「五日後、おもいっきり可愛がってもらうからね。
  死なないでよ」

「はい」

 やっと表をあげた四郎の笑みに抱きついてキスしたいけど、今は自重。
  きっと、会える。
  そう信じているから。 

「鶴姫と夏は一緒に」

「いやじゃ。
  お主が居ない時が、四郎を寝取る好機ではないか。
  この時に残らずに、どうする?」

 その言い草に思わず苦笑してしまう。
  女の戦いも現実の戦と同じぐらい必死なのだ。

「四郎はこの杉乃井より難攻不落よ」

「だからこそ、落すのじゃ。
  お主が五日後に悔しがる姿が目に浮かぶわ。
  だから、安心して後ろを固めるがよい」

 鶴姫が差し出した手を握る。

「死なないでよ」
「四郎の子を孕むまで死ぬものか」

「姫様、そろそろ」

 麟姉さんが促す。
  私は政千代・八重姫・九重姫を従えて、裏口に向かう。

「行くの?」

 裏口には母上が待っていた。
  きっと、私と共に宇佐に退かせようと麟姉さんあたりが画策したのだろう。

「母上は?」

「ここに残るわ。
  子を逃がすのが親の勤めでしょ」

 日頃ちゃらんぽらんとしていても、こういう時は親をするのだなぁ。

「そんなものよ。
  親ってものは。
  あんたももうすぐなるのだから、それぐらい覚えなさい」

 ウインクして微笑む母の姿に、何故か涙がこぼれる。
  あれ?おかしいな?
  どうして、ここで泣くんだろう?

「行ってきます」
「いってらっしゃい」

 そんなあっけない別れ方をして、私はサードステージに乗り、杉乃井の裏口から数騎を連れて去る。
  海岸線は危ないので、山伝いに豊前竜王城を目指す。
  二十一世紀の地理で言うなら、宇佐別府道路の道伝いと思っていただけると分かりやすいだろう。

「ちょっと待って」

 別府湾が望める山の中腹で、私は馬を止める。

「どうなさいました?姫?」

 馬を下りた私に、政千代が不思議そうな顔をする。
  府内はもうもうと広がる黒煙のせいでどうなっているか良く分からない。
  だが、南蛮船の砲撃は続いているらしく、響く爆音がここまで聞こえていた。

「戦勝祈願の祈祷ぐらいさせてよ。
  どうせ、八重姫・九重姫の二人が先を確認しないと、先に進めないのだから」

 この手の落ち延び系では本国といえども、容赦なく襲ってくるのが戦国の怖い所。
  何処までが安全なのかを先行して探らないと先に進めないのだ。
  別府湾で暴れる数隻の南蛮船を見据える。
  このままで終わるとは思うなよ。
  まだ、私のターンは始まってもいないんだから。
  私や政千代の髪が突風になびく。
  私が神力を発動させたのだ。

「ひっ、姫様っ!」

 南蛮船がうろたえるのが分かる。
  理不尽な強風に、南蛮船が帆を降ろして抵抗しようとしているのが分かる。
  だが、逃がさない。
  あのでかい船体そのものに風を当て、強風を海にも当てて波も駆使して、南蛮船達を別府に引き寄せる。
  一隻、二隻、三隻、四隻、あ、一隻転覆した。
  四隻の南蛮船が別府の北浜に打ち上げられる。
  それが限界だった。

「ごめん。
  後、頼むわ」

「姫様!
  しっかりしてください!姫様!!」

 政千代の悲鳴を聞きながら、神力の使いすぎで私は気を失った。


 


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