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大友の姫巫女

第四十四話 殖産・火力・闇の巻 

 冬が過ぎ、九州では梅が花を咲かせるそんな時期になりました。
 
  お元気ですか?
  宇佐で巫女をしている珠です。

 南予侵攻も終わり、春になった豊後大友家を色々語ろうと思っています。
  まず、戦争のあとしまつたる金の工面です。
  南蛮船のレンタル料金に、商業船の徴用による経済活動への悪影響、功績に伴う褒賞の授与。
  更に南予統治の費用と殖産の予算策定。
  ……本当に金、金、金です。

 本来商用船までの徴集までは考えていなかったのですが、宇都宮への河野侵攻と長宗我部の一条侵攻でそんな事も言っていられず。
  豊後についてはほぼ総力戦状態に。
  仕方がないのでヘソクリその一を出す事にしました。

 鯛生金山です。

 香春の金堀衆に調査させて採掘を開始。
  その金をもって一時的な支出を賄う事に。
  秀吉が天下を統一した時に鉱山を直轄下に置いたので、いやだったのですが。
  豊後に秀吉の監視地ができるのと同義語だったので。
  けど、朝鮮出兵で九州各地に蔵入地を作っている事を思い出して予定を変更。
  秀吉が統一するまでに掘りつくしてやるという心意気です。
  考えてみると、筑豊の炭田も秀吉直轄下に置かれるんだろうなぁ。
  コークス形成技術が広がったら輸出できるしね。あれ。

 砲の運搬を考えて馬の品種改良にも手を出す事に。
  奥州馬は遠いので朝鮮半島から大陸馬を輸入。
  養蚕業に力を入れて絹織物の商品開発を指示、大友女に着せる事でブランドの確立を目指します。
  まだ龍造寺勢力圏だけど、磁器開発もそろそろ開始。
  職人をできるだけ九州にかき集められたらと。
  もちろんお茶も大事な輸出品です。
  八女茶も大々的に生産を開始。
  そういえば、判子による本の生産と同時に始めたのが、本を読み聞かせる事による娯楽の提供。
  引退した遊女達の第二の雇用として活躍中。
  と、同時に民衆の声を拾ってもらう耳として活躍してもらう事に。
  対毛利戦前提に豊後・豊前・筑前においてはかなりのインフラ整備を進めてきたけど、対島津戦ではまだ考える事ができず……
  しかも、上三国のインフラ整備に金取られまくりです。
  大砲による防衛戦を前提にする為に駅館川と山国川、遠賀川に橋をかける事にしましたよ。
  石橋の沈み橋だけどね。
  これも香春の石灰石と阿蘇の火山灰をコークスで焼いたセメントもどきがあるからこそなんだけど。
  筑前・筑後・肥後の街道の整備も開始しました。
  いずれは、筑後川にも沈み橋を作る事になるでしょう。


  さて、こんどは物流の話を。
  キャラック船二番船「大友丸」がようやく仕上がり、別府湾で現在完熟訓練中です。
  順調に行けば年一隻できるかなという所でしょうか。
  これだと少し海軍ができるのに時間がかかるので、少し外道な裏技を。
  はい。南蛮人から船を買うという荒業です。

 いえね。
  この時代多いんですよ。船員による船長への反乱が。
  何しろ欧州から出て行った船で、帰ってくるのがわずかというハイリスクハイリターンな商売ゆえ、強欲で船員の質もあまり良くは無い。
  難破の次に船の喪失にあげられるのが、船員反乱による海賊化だったりする。
  で、別府が船員達の母港となったので、男達にうちの女どもがこう囁いたわけですよ。

「船ごと別府にこない?
  船は難破した事にすれば問題ないし、積荷は博多でさばける。
  で、『船長死亡で船は難破。積荷は喪失』で、さばいた荷はここで遊ぶ金に」

 いや、ひっかかる馬鹿がいるとは思わなかったわ。マジで。
  これも裏があって、船の喪失よりも先に疫病や交易上のトラブルで先に船員がいなくなる事の方が多いのだわ。
  で、そんな船は機密上破却していたのだけど、現地で船員を募って難破という事にして海賊化する輩も多かったんだな。
  そんな彼らにログ(記録)ロンダリングを指南し、彼ら海賊はまっとうな身分を、私は船をというビジネスが成立。
  この船、南予侵攻でうちの兵を運んでくれた船の一隻なのだけど、船長が強欲で船員が不満を持っていたので話がほいほい進む。
  南予から帰る兵を乗せるふりをして安宅冬康率いる水兵を乗せて、八幡浜を出港。
  で、水兵反乱で船長が殺され、船は日振島に。
  残りの船員を大友水軍の船で別府に運んで、船そのものは豊後水道で難破と報告。
  こうして、三番船「九州丸」げっとです。

 ……日本のロアナプラと呼ばれるのもそう遠い事ではないかもしれません。
  人身売買なんて、うちはアジア交易における大手の買手だしね。
  まぁ、スナップと麻薬だけは手を出さないように厳命させておかないと。
  
  船については建造と購入で拡張ですが、こんどは船員の育成です。
  安宅・若林・佐伯等の水軍衆から人間を供給していますが、いずれ足りなくなるのは目に見えている訳で。
  人材の確保もまた裏技を使う事に。
  はい。倭寇です。

 彼らもうちから始まるアジア交易の新しい流れに食いつきたいと思っていたわけで。
  同じく、身分保障と金と女で見事に転びました。
  しかし、倭寇とは名ばかりで、既に中国人主体の海賊になっていたとは……
  まぁ、博多と府内を押さえている大友の正規水軍(商船隊)になれる機会はそうは無いでしょうからね。
  で、倭寇経由で手に入れたかったものが大量に転がり込みました。
  仏郎機砲です。
  大砲の事を明では『将軍』と呼ぶ決戦兵器なのですが、そこは中国。
  金でめでたく横流しできたとか……駄目だろ。
  既に明では、この砲は技術解析を終えて量産体制(1537年時に3800門も生産されている)に入っており、後の朝鮮出兵で日本軍を大いに苦しめる事になるのですが。
  カルバリン砲の技術解析と生産はまだ難航しているので、仏郎機砲は防衛戦で使うつもりです。
  と、なれば今度は火薬の問題が。
  土硝法は当然導入する事にするとはいえ、決定的なまでに火薬が足りない。
  軍編成において、私は大砲をナポレオン時のフランス軍並の配備数(約30-40門)に引き上げようと画策している。
  鉄砲は現状で二千丁用意したけど、これも三千まで上げたいし、無理だろうけど騎兵もできれば三千は欲しいのだ。
  大友の戦時体制における最大出兵兵力が現状で約六万。
  その中核たる豊後国衆の兵にこれらの装備を集中運用させる事で、対毛利・島津戦を乗り切る腹積もりなのだ。
  本当なら諸兵科連合まで持って行きたいけど、現状の国衆頼みの動員体制にそんな事ができる訳も無く。
  という訳で、火力による歩兵支援を充実させる事でひとまずごまかす事に。
  せめて三兵戦術まで持って行きたいけど、常備軍にマニュアル化と士官学校の建設は絶対条件だしなぁ……
  現状足りないものは、他所から持ってくればいい訳で。
  宇佐の巫女である事をフルに使って、雑賀衆と接触。
  南蛮船を使って、雑賀衆を紀伊から九州に持ってくるという裏技を考え中。

         
  で、倭寇を使う事の光もあれば闇もあるわけで。  
  その結果が今、目の前に。
  はい。
  ついに来ました。
  倭寇が商品として出してきた、金髪や赤髪の白人おねーちゃんです。

 また救いが無いのが、裸で首輪をつけられて鎖でつながれて、その全員が孕んでいたというあたり。
  彼女達の供給源はオスマントルコで、彼らイスラム商人がインド洋を越えて勢力圏である東南アジアへ。
  そこから中国商人の手を経て我々の所に。
  で、彼らの計画では、我々が調教してブランド化したものを中国本土に売るのだと。

 人売りの禁止は徹底させていますが、ブランド化に伴う偽者商売は止めようが無く。
  見よう見まねで(何しろ男はそれを味わっている訳で)流出するうちの女達の技術は、そんな偽者にも覚えさせるだけで買値が数倍に跳ね上がるとか。
  しかも、本物である大友女を私が販売禁止にしているから、更にレアリティが上がっているという救いようの無さたるや……

 で、そんな彼女達の陵辱航海の時間はおよそ三ヶ月から半年。
  航海時の悪辣な環境で命を落す者も多く、船内で使われ、買われた先で客を取られ、こうして極東にやってきた女達はその母数からして全体の一割以下。
  残りは過酷な船内で死ぬか、買われた先で一生を終えるかという絶望の果てなのか、心が壊れている物(字間違いで無いのが痛い)も多く、目に光がありませんよ。
  もう条件反射になっているのか、男が前に立ったら自然に壊れた笑みを浮かべてくぱぁしてくれた妊婦のおねーさん見た瞬間、己の所業のおぞましさに吐きましたよ。その場で。
  あれ、リアルで見たら本当にトラウマになるね。まじで。
  なお、この商品を持ってきた倭寇の言葉が痛すぎる。

「孕んでいる方が高く売れるんだ。
  赤子ならば、その地になれるのが早いからな」

 ええ。
  全部買い取りましたよ。
  偽善と分かっていても見捨てられませんでしたよ。



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