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大友の姫巫女

第十五話 おじゃる丸との語らい 

 無駄だと分かっていても、抑えきれないものがある。
  自分に関係ない事でも、それを見てみたいと思う。
  そして、それができるのは後にも先にも今しかないと分かっていた。

 

 お元気ですか?
  宇佐で巫女をやっている珠です。
  今回はなんと船の上だったりします。
  府内から弁才船に乗り込んで、南下。
  目的地は土佐宿毛の港です。
  父上にねだった最終目的地は京都・堺。
  本当の目的地は尾張です。

 そう。桶狭間で勝ち、天下にその名を轟かせた織田信長に会いに。
  何かする、求める訳じゃないですが、歴史に名を轟かす彼を一目見てみたいと思ったからが本当の理由。
  毛利の尼子戦はあと二年はかかるので、この時期しか東を旅する機会はないのです。
  だから、父上にねだってこうして海の上です。
  これは父上に言えない事ですが、豊前・筑前で少々目立ちすぎました。
  一門の人間が、当主をさしおいて活躍するのは粛清フラグです。
  で、そんな状況を打開する為に、領国から出るという形で頭を冷やそうと。

「ゆっくり楽しんでらっしゃい
  豊饒祈祷は私がやっておくからさ」

 最近更に艶気でまくりな母上ですが、信仰心がうなぎのぼりらしく、色々力を取り戻しています。
  そんな恩恵は私にもちゃっかり。

 胸が出てきました。

 ロリ巨乳ですよ!ロリ巨乳!!

 あ、十三なんてババアなんて言った奴はちょっと表出ろ。
  母上なんて年…………うん。私もまだ死にたくない。
  体がむちむちぷりんなら年なんて関係ないのです!
  真面目な話、豊饒系神力のスキルのいくつかを入手。
  そろそろ対毛利戦を意識して八幡神から士気高揚の神力をもらいました。
  戦巫女ですよ!戦巫女!
  このスキルで、

「あえて言うわ!
  毛利軍などカスよ!!!」

 と、どこぞのジオン軍総帥の演説するロリ巨乳巫女。

「諸君。
  私は戦争が大好きよ」

 と、少佐の真似事をするロリ巨乳巫女。

 で、それに答える大友軍将兵。
  駄目すぎる。この国。

「姫様。お体を冷やしますよ」

 今回、私の付き人としてついてくれたのが、麟姉さん。
  後に吉岡妙林尼と呼ばれる女武将なのですが、うちの姫巫女衆随一の薙刀使いです。
  彼女の麟は本来父上出家後の名前の宗麟から貰っているけど、まだ出家していないので私がつけました。

「船頭に聞くと、もう少しかかるとの事」

 執事のハヤテちんこと佐田鎮綱も当然ついてきていたりする。
  我々一向は三隻の船を仕立て、豊前産の鋼とコークスを積んでゆったりと豊後水道を下っています。
  人員も腕利きの姫巫女衆二十人と御社衆三十人を連れてきたり。
  まぁ、府内で何かあって「帰ってくるな!」と言われても、堺で遊郭を開くだけの資金と人員は持ってきているのが私らしいというかなんというか。

 一応、今回の旅の身分は土佐中村御所までは大友の使節として。
  そこから先は歩き巫女として熱田参りという設定でゆくつもりです。
  旅は半年を予定。
  京都では朝廷や幕府に挨拶をするので大友の名前を出しますが、あくまでお忍びの旅です。

 土佐一条氏は信長の野望あたりをしていると、長宗我部氏のかませ犬、最弱ステータスとして一部にマニアがいる程度ですが、こうして中村についてみるとどうしてどうして。
  中々の権威を誇っています。
  地方大名が皇族に連なる一条家という血を求めた結果でもあります。
  かつては大内がこの血を求め、今、この血を庇護しているのは我が大友だったりします。

 で、今目の前にいるのが信長の野望最弱スキル十傑の一人、一条兼定殿。
  ぶっちゃけていうと、大人になったおじゃる丸。
  そりゃ、滅ぶよなぁ……
  伝書蛍もいないし。

「単刀直入にお聞きします。
  都に帰りたくはないですか?」

 私の問いかけに、まったりと考えながら兼定殿は口を開きます。

「雅な者ゆえ、田舎は飽いておった所じゃ。
  とはいえ、都での暮らしは金がかかるしのぉ」

 確信した。こいつ大名じゃない。公家だわ。
  ならば、落ちると確信して私は口を開く。 

「我が大友が都での暮らしを、お支えいたします」

 正確には私が影ながらだ。
  一条帰還はあくまで兼定殿の意思によって行われなければならないからだ。
  私もこれ以上は目立ちたくない。

「で、麿に廟堂で何をさせる気でおじゃる?」

 ほぅ。
  こちらの目的を廟堂、朝廷工作であると見抜いたか。
  さすがに公家らしい事になると頭がまわると見える。
  ただの操り人形にはならないか。それもよし。

「先の話ですが、筑前にて毛利と戦が始まります。
  その和議をいずれお願いいたしたく……」

 まさか、もうすぐあんた滅ぶから、その前に役立つように私が使ってやるよなんて言えない。
  対毛利戦、対織田・豊臣の朝廷に対する切り札にする予定だ。
  兼定殿はまったりと考えた後に、私の誘いに乗った。

「よいでおじゃる。
  で、この中村はどうするのじゃ?」

 それぐらい自分で考えろよ!
  どうせ長宗我部に取られるんだからよぉ!!
  なんて言える訳も無く。

「それは一条様がお決めになる事で、私ごときが口を挟むつもりはございませぬ」

 表面上、終始にこやかに会談は終わったのでした。



 

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