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大友の姫巫女

第十話 秋月騒乱 あとしまつ 

数日後 古処山城

 お元気ですか?
  宇佐で巫女をやっている珠です。
  今回は戦に勝ったので、戦後処理です。
  その為に古処山城まで出向いて、今回の秋月討伐の論功をする事に。
  秋月の一件は私に任せられている事は父上から言質を頂いていますが、豊後から兵を率いた加判衆でもある戸次鑑連殿、吉弘鑑理殿の二人にも挨拶をするつもりです。
  結果、毛利対策で松山城に戻った田原親賢殿以外の将兵が全て古処山城に集まる事に。
  そして、戦勝でこちらに擦り寄ってきた国人衆や博多商人がやってきて市が立ち、さながら馬揃えみたいな華やかさに。

「勝どきをあげよ!」

「うぉー!」
「うぉー!」
「うぉー!」 

 万の兵があげる勝どきというのはこうも凄い物かと実感。
  とはいえ、その声を中央で聞く羽目になろうとは。
  広間の中央に私、その左右に戸次・吉弘の加判衆が座り、佐田隆居と鎮綱父子・吉弘鎮理・志賀鑑綱・城井鎮房の五将に他の将が続いています。
  で、この功績がちょっと揉めました。

 志賀鑑綱の加増は確定なんだけど、彼は豊後南方の守りを固める南志賀氏の当主だから長く領地を空けたくは無いのは分かっているし。
  あくまで功績は佐田隆居・田原親賢・城井鎮房の三将に回す予定だったのですが。

「この度の戦は全て姫様の戦でございます」

 と、そろいも揃って三将とも辞退しやがって……
  新領土は統治が難しいし、しくじった責任でお家取り潰しもあります。
  三将の内、佐田と城井は大領持ちだから戦で荒れ、毛利正面ゆえ更に荒れかねないこの領地は欲しくないのでしょう。
  田原親賢は父上の寵臣で、領土経営より府内にて父上の側で使えたいと言うしなぁ。
  父上に報告すべき直接の功績は加増などの知行UPが期待できるのですが、このままでは秋月領の大部分を私が押さえる羽目に。
  領土拡大は嬉しいが、それは統治を伴うから現領地の香春に筑豊・秋月と入れる十五万石近い領土の統治など不可能に近い。
  寝返った千家宗元をはじめとする秋月旧臣の所領を安堵しても、1/3の土地が浮く計算に。
  三将にまとめて領土を渡す腹だったのだがその目算が狂いました。
  戸次殿にまとめて投げる事も考えたが、それは国替えになり箍が外れかかっている父上を野放しにしかねないから却下。
  同じ理由で爺に丸投げも却下。
  宇佐衆の筆頭たる佐田隆居が国替えになった情況で、私一人で宇佐を円滑に運営できるとは思えないし。
  駅館川開発も始まったし。
  城井殿丸投げは別の理由で却下。
  大領を得た彼が寝返ったら北九州の防衛体制が崩壊する事になり、城井氏国替えは後の黒田氏による城井討伐と同じになる。
  彼と爺には金銭で報奨と、あと茶器でも買って渡そう。

 田原殿には意地でも領地を受け取ってもらう。
  毛利最前線に立つ以上、抱える兵は多い方がいいからだ。
  あ、田原親賢は元々分家(養母の奈多氏の一族)の人間で功績が無いからと妬みを買っていたりする。
  千家宗元内応は彼の功績にしておこう。
  府内での彼の圧力はこれで少しは減るだろうし。
  ああ、田原氏で思い出した。
  田原本家は大友の分家筋だけど、元々大友に反抗的なんだよな。
  古処山城に移して旧領を父上直轄にするか。田原本家領に奈多八幡もあるしね。
  筑豊・秋月で五万石。田原本家領のほぼ倍。
  断れば叛意ありで断罪できる。加判衆の二人も賛同してくれたので父上に話を通しておこう。

 さて、残りは香春岳城か。
  城代探さないといけないけど、仕方ないので古処山城で活躍した吉弘鎮理を城代に。
  領地もつけるから兵を養って……いや、気合入れて頭下げないで。怖いから。
  父親の吉弘鑑理は泣いて喜んでるし、父と一緒に従軍していた吉弘鎮理の兄鎮信まで感謝で私に頭を下げるし。
  武士にとって一城の主というのはこういうものかと上の空で思ったり。


  さて、功績が終われば今度は処罰の方。
  縄に縛られたまま秋月種実が連れて来られる。
  あ、中々の青年武将だな。秋月種実。

「殺せ」

 話す余地無しですか。
  殺せるなら殺したいが、秋月旧臣をこれ以上刺激したくないのも事実。
  生かすか。

「こんな毛も生えてない女に生かされるほど、俺の命は安くないわ!
  首をはねろ!」

 ぷ っ ち ん !

「ふふ……言うてはならん事を言うたな。そなた」

 舐めちゃいけない。
  私の血の半分は神様だ。これぐらいの祟り神のまね程度ならできる。
  何だか諸将が生暖かく私から遠ざかっている気がするが黙殺する。
  一応気にしているのだ。胸と毛は。
  ちゃんと、毎日寝る前に揉むし、鏡で生えてないかと確認するのが日課の私の地雷を踏んだな。貴様。

「そなたには死すら生ぬるい!
  男に生まれた事を後悔させてくれるわ!」

 姫巫女衆の一人を呼び、秋月種実の縄を手渡す。

「こいつを府内の父上の所に連れてゆけ。
  道中、好 き な だ け 食 べ て も 構わん!」

 キラーンと目が輝く巫女と、意味が分かっていない諸将と秋月種実。
  その意味が分かるのは数日後。
  護送中、寝ている時以外は常に巫女や遊女が彼の上で腰をふる状況で顔は痩せこけ、府内に着いた時には女を見るだけで悲鳴をあげるようになったとか。
  なお、まぐわった女達に孕んで娘が生まれるなら私が名付け親になると宣言している。
  当然律子と名付ける予定だ。
  きっと優秀な事務……お姫様になるだろうから。
  
 
  次はお伺いにやってきた諸将や博多商人との面会。

「これはこれは姫様。
  本日はお味方勝利のおめでたい日に、祝い物をと」

 箱に収められた品々に諸将の視線が羨望に変わる。
  出されたのは茶器の品々。
  茶入、茶壷、茶釜、茶碗、花入、茶杓、茶筅、香炉、水指。綺麗に全部揃っているあたり博多商人の心意気を感じたり。

「姫様はお父上に茶を師事なさっておられるとか。
  姫様の茶の道に我ら博多町衆手助けがしたいと思い、こうして持ってきた次第。
  どうかお納めくださいませ」

 筑紫肩衝の茶入、志賀の茶壷、芦屋釜の茶釜とか、ちゃんと父上に恥をかかせず、かといって私が恥をかかない品々を揃えてきてる。

「いつか、この品々を使って茶会をしましょう。
  近く秋月から香春の街道整備を考えているのでその時はよしなに」

 お礼の利権の言質を与える事も忘れない。
  なお、これを持って父上に会いに行った時、さわやかに茶器を奪おうとしたのは後の話。
  父上、キリスト教だけでなく茶の湯にまで救いを求めていたのですね……  



 

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