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大友の姫巫女

第五話 歪んだ父母娘のふれあい

 私という存在が世界のイレギュラーならば、この奇跡もあっていいよね?


永禄五年(1562年)九月 豊前国 宇佐八幡宮

 お元気ですか?
  宇佐で巫女をやっている珠です。
  こうやって最初の出だしを固定すると後が楽でいいです。
  いずれは某常春の国みたいな国を作れればと。
  ……ダイヤじゃないけど、うちの領地黒ダイヤ(石炭)と白ダイヤ(石灰石)出るし。

「ぁぁ、柿美味しい」

 ……この後ろで柿食べてる幽霊もどきの神様どうにかならないでしょうか?まじで。
  今年もめでたく豊作で、香春からも年貢が入ったとの事。
  結果、信仰心があがりこうして姿が現れたと。母上様。
  腹立たしい事に、神様らしい巫女装束をつけていながらぼん!ぎゅ!ぼん!で卑猥極まりませんよ。
  十一歳児のつるぺったんには目の毒ですよ。ええ。
  ああ、嫉妬で神が殺せたら……

「大丈夫。
  私の子だからあっというまにロリ巨乳に」

 まてやこら。
  巨乳はいいが何だそのロリは。

「だってもうすぐ婿取りの時期でしょ。
  で、あっという間にロリ妊婦になるし」

 否定できませんが。ええ。
  それがいやだから、こうして巫女やってんでしょーが!
  眼前につつつと現れてとても清々しい顔でにっこり。

「嘘でしょ。
  だって夜中、体が疼く……」

 わー!わー!わー! 

 体は子供でも心は大人なんだから仕方ないんです!

「ぁぁ、栗美味しい」

 私の釈明など聞いちゃいないらしく、白々しくまたお供え物つまみ食いしやがって。
  一応別人格というか別神格なので個々に行動はとれるけど、現状の信仰心では宇佐八幡から出るのは難しいらしい。
  しかし、それならどうやって私作ったんだ?

「決まっているじゃない。
  貴方を作るので力使い果たしたのよ」

 説明ありがとう。母様。
  これで他の人には見えないから話していると電波だよなぁ。私。
  神の子で巫女という設定無かったら、「病院が来い!」とほざいて黄色い救急車呼びつけられていますよ。 
  母様。いいかな?

「何?」

 何で父様だったの?
  梨をくわえていた母上はうーんと考えて一言。

「最初は、ここを焼く男だから祟り殺そうとしたのよ。
  けど、そんな力既に失っていたしね。
  で、それを止める為に貴方を生んだ」

 そっか……
  とりあえず、目的は果たしている訳だ。
  親孝行の為にもキリスト教対策はなんとかしないと。
  けど、父上の闇が大きすぎるのが問題なんだよなぁ。
  父上の父に当たる大友義鑑と弟塩市丸を二階崩れで自ら手を下さなかったとは言えその死を見殺しにし、同じ弟で大内家の養子となった大内義長も見殺しにしている。
  更に、叔父の菊池義武の反乱、股肱の臣だった一萬田鑑相・小原鑑元の謀反と王の孤独をたっぷり味わっているのだから。
  神に救いを求めたのを何故咎められるだろう?

「救いを求めるのに手を差し出すのも神のつとめ。
  救ってやりな。
  私も手伝うからさ。
  あの褥の気持ち良さは忘れられなくてさぁ……」


  前言撤回。
  駄目だこの色ボケ神。はやく何とかしないと。


数日後 府内 大友館

「お前を嫁にと言ってきた者がいる」

 いきなり呼び出されて、茶室での父上の一言に茶を噴き出す私。

「ど、何処の馬鹿ですか!?
  私を嫁にとほざいた酔狂者は!」

 私が茶を吹いたのを見て笑っていた父上はその相手の名前を笑わずに告げた。

「毛利元就の四男、少輔四郎殿だ」

 …………誰?それ?
  毛利って三本の矢のモデルの吉川・小早川のイメージが強いからそれ以外の人のイメージが中々湧かなかったり。
  とはいえ、あっこは両川がいる以上、戦で馬鹿をするとも思えないしなぁ。
  可もなく不可もなくという評価をしておこう。

「知っていると思うが、朝廷と幕府を通じて現在毛利との和議を画策している。
  お前の嫁入りは、向こうからの強い要望でな。
  婿養子でも構わぬと言ってきた」

 やっぱりきたか。あの謀略の鬼。
  色々やっているの隠してなかったけど、迷う事無く私に諜略を仕掛けてくるとは。
  つーか、宇佐、もしくは香春岳のどちらかに毛利一門の人間が入るって絶対死亡フラグですから。

「で、それをお受けになると?」

 『そこまでボケてねーだろうな?父上』という言葉を視線で訴えかけるが、まだ父上の顔は戦国大名の顔だった。

「自惚れるな!小娘。
  わしが毛利狐の見え透いた手に引っかかると思うたか。
  だが、お前の婿については考えている事は覚えておけ。
  ……どうした、その目は?」

 睨んできたので、素直に今、思っている事を口にした。

「いえ、父上はいいなぁと。
  養母上ふくめて何人もの妾と遊べるのですから」

 その言葉の意味を察した父上が今度は茶を噴き出す番だった。

「なななななな……なにをいっている!」

 まさか初潮もまだな小娘から、男遊びしたいと聞かされるとは思ってなかっただうからそれは当然だわな。

「仕方ないじゃないですか!
  誰の子供と思っているんですか!」

 そう言われるとまったく言い返せない父上だったりする。
  母親あれだし。
  いや、前世でハーレム願望あったんで。
  男はべらせてとかちょっとネオロマンス風ぽくっていいかなぁと。
  凄いね。立派なビッチフラグばりばり立ってるよ。

「お前が男だったらなぁ……」

 いつの間にか親の顔に戻っている父上。
  露骨に夜遊びしたいと言い出した娘を持つ親の顔だったりする。

「一緒に別府の遊郭に繰り出していたと。
  お願いですから、せめてお忍びで来られてください。
  養母上の小言受けるの私なのですよ」

 けど私の伝えた技術で養母上が艶々なのは内緒だ。

「ま、まぁその話はおいといてだ」

 あ、逃げた。

「はい。
  先に手紙にて伝えましたが、次の遊郭を立てるので一応話をと」

 私の方は今回これが目的だったりするが、さっきの話をひきずっている父上は助平親父のままだったりする。

「ほう。
  それは一度行かねばならぬな。
  何処に作るのだ?」

「筑後国、原鶴」

 その一言で戦国大名の顔に戻る父上。やっぱりまだボケてはないらしい。

「秋月か」

 場所で正確に私の意図を見抜いてみせる。

「はい。
  門司の戦で毛利の威信は落ちましたが、元来秋月・筑紫・宗像は我らに従うとは思いませぬ。
  必ず叛く事になるだろうと。
  その前に各個に潰します」

 秋月を選んだのは兵を出す時に香春岳からと日田からの両方から出せる事と、秋月の当主がまだ幼い事だった。

「手は?」

「最初に原鶴に遊郭建設と称して兵を集めます。
  次に隠れている秋月の忘れ形見が見つかったと触れを出して、秋月残党をおびき出します。
  後はそれを父上が潰していただければと」

「兵は?」

「一万もあれば。
  高橋鑑種殿に命じて、臼杵、立花の同門衆に筑紫・宗像の監視をさせて頂ければ。
  秋月の所領、完全に押さえて見せましょう」

 戦国武将から父親の顔になって父上は寂しそうに告げた。

「お主が男ならわしは隠居できるのだがな……
  戸次鑑連、吉弘鑑理を連れてゆけ。
  秋月領の処遇は全てまかせる」

 その親の嘆きに何も返す言葉も無く、ただ静かに私は父上に頭を下げたのだった。



 

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